先日配信した「医療用麻薬①」と「疼痛コントロール」の記事は読んでいただけたでしょうか。今回は医療用麻薬①で伝えきれなかった「セデーションについて」と「もしも命に関わる医療用麻薬の副作用が起きたら」についてお話ししたいと思います。まだ過去記事を読んでないよ!!という方はこちらからどうぞ!!

医療用麻薬のもう一つの作用

医療用麻薬の作用について鎮痛作用鎮咳作用については上記の記事でお話ししましたが、実はもう一つ医療用麻薬の作用があるのです。それが「軽度の呼吸苦を取り除く」というものです。これは科学的に作用機序がまだすべて解明されていないのですが、呼吸苦に対して医療用麻薬を使っていた人間としては、ある程度の効果は実感していました。呼吸苦そのものを取り除くというよりかは、医療用麻薬の副作用でもある傾眠を逆手にとって、少しウトウトさせてあげることで苦痛を取り除くといったイメージです。医療用麻薬や鎮静剤などを使用して傾眠状態にすることで苦痛を取り除くことをセデーションと言います。

鎮痛目的で医療用麻薬を使用する場合には、命に関わる副作用が出現しない限りは基本的に痛みに合わせて増量し、上限はありません。ですが、セデーションの場合には、最少投与量を継続して投与するような使い方をしていました。

がん終末期で呼吸苦が出ている患者さんと言うことは、その多くが看取りの方針の方だと思われます。病状が悪い上に全身状態も悪いことが想定されるので、体重は少なく、臓器の代謝能力も落ちている・・・と考えれば薬剤の投与量は少ないほうが安全に使用できると想像ができますよね。

呼吸苦に対する医療用麻薬の使い方

がん終末期の患者さんにとって疼痛や呼吸苦というのはよくみられる症状です。具体例を挙げて薬剤の投与例を紹介してみたいと思います。

・Aさん78歳男性
・急性骨髄性白血病終末期
・ADLは寝たきり
・意識レベルはIー1
・24時間家族の付き添いあり
・余命1週間程度と見込まれている
・内服薬はすべて中止している

Aさんは白血病の浸潤からくる全身の骨痛が出現しておりアセトアミノフェンの点滴静脈内注射を1日4回定期投与を行っている。それでも体動時に苦痛様表情がみられるためにロピオンの点滴静脈内注射を1日3回定期投与を開始した。疼痛コントロールは良好であるが、付き添っている家族より「なんだか時々うなされているというか、苦しそうです。」との訴えがあり。本人へ尋ねると、「苦しいのか痛いのかよくわからん。でも辛くて寝るに寝られない」と身の置き所が無いとの訴えがあり。表情は乏しいが苦痛様表情まではみられない。

こんな会話をしたり看護記録を読んだりしたらどうでしょうか。何を考えますか?

私は病棟勤務中にこのような現場に何度も遭遇してきました。もちろん対処方法は1つではないです!!患者さんの人数だけ対処法はあります!ここで伝えたかったのは、がん終末期の患者さんは「痛い」「苦しい」などはっきり言えないということです。わたしも患者さんを理解したい一心でたくさんお話を聞いてきましたが、どうしても自分の身に置き換えるのが難しかったのがこの「身の置き所が無い」という言葉。自分に置き換えるのがとても難しいのですが、痛みとも苦しいとも取れるこの苦痛を取ってあげるのが難しかった。なので、患者さんにその希望があり、家族も了承してくれ、ある程度の効果が期待できそうだと見込める場合にセデーションという方法がとられるのです。

このAさんにもプレぺノン時間量0.05mlを持続的に投与することになりました。プレぺノンはシリンジ型のモルヒネ製剤で、小型シリンジポンプを使用して投与しますが、その最少投与量が0.05mlになります。

プレぺノンを開始してはいおしまいと言うことではなく、Aさんは不眠とも取れる訴えをしていますので、日中はプレぺノンの効果で傾眠状態にしつつ、プレぺノン使用中でも夜間の不眠感があるのであれば、コントミンなどの精神神経安定剤などを併用する形で苦痛の緩和に努めていきます。

どうでしょうか。なんとなくでも想像することができたでしょうか。

患者さんがたくさんいれば対処法もたくさんあります。呼吸苦だからプレぺノンではなく、患者さんの訴えを聞いて、家族と相談しながら、何が最良の方法か考え続けることができると良いですね。

もしも重度の副作用がみられたら

ここからは看取りの方針ではなく、がん治療中の患者さんに医療用麻薬による命に関わるような副作用が起きてしまったら、というテーマでお話ししたいと思います。

命に関わる副作用とは、呼吸抑制のことですが、実は私は医療用麻薬を使用している患者さんで呼吸抑制が起きているのを見たことが無いです。ですが、起きるかもしれないという意識は常に持っていて、特に夜勤の消灯後など患者さんが基本寝ているときなどは、巡視のたびに呼吸数を数えました!!(たまに患者さんが実は起きていて、なに?!って感じで目が合うとドキってするという・・・)

なので呼吸抑制を発見してDrコールするという現場は経験がありません。ですが医療用麻薬を使用している患者さんのカルテには必ず医師からこのような指示が入っています。

呼吸数8回/分以下でプレぺノンの投与量を半減。0.05mlだった場合には中止可。

病院や主治医の方針によって多少の違いはあれど、ほぼこのような内容ではないかと思われます。注意すべきは勝手に投与中止はダメ!ということ。最少投与量の0.05mlだった場合には中止せざるをえないですが、呼吸回数の減少が見られた場合には半減しかしてはいけません。半減した上でDrコールし、医師の指示に従います。

なぜ半減なのか・・・。これはここまで医療用麻薬についてたくさんお話ししてきてなんとなく理解できているとおもうのですが、医療用麻薬って微量で絶大な効果がある薬なのです。そんな薬を勝手に一気に止めてしまったら・・・。

・急激な下痢症状
・急激な疼痛悪化

起きそうじゃないですか?基本的に医療用麻薬を使用していた患者さんが医療用麻薬を急に中止すると、禁断症状と言って体がその変化についていけずに、イライラしたり、異常な汗が出てきたり、意識レベルが悪くなったりといった症状が出てしまいます。

もちろん呼吸抑制によって命が危なくなるのは一番あってはならないことですが、禁断症状を起こしてしまってもいけません。あくまで、半減です。ここしっかり押さえておいてくださいね。医療用麻薬を扱う新人看護師さんは一度院内の医療用麻薬のマニュアルと医療用麻薬を使用している患者さんの主治医からの指示をチェックしてみてくださいね。私が紹介したような内容のことが書かれているはずです。あくまで院内のマニュアルと主治医からの指示に従うようにしてくださいね。

まとめ

医療用麻薬②の内容はいかがでしたでしょうか。「セデーション」「呼吸抑制が起きたらどうするか」について理解は深まりましたか?

なかなかヘビーな内容ですが、看護師として働くみなさんにとってとっても大事な内容だったかと思います。ぜひ何度も繰り返し読んでいただいて、知識の習得に努めてくださいね!!

質問、ご意見、なんでもどうぞ!mailto:caipingye60@gmail.comまでお気軽に連絡くださいね。下のコメント欄を使用してもらっても大丈夫です!!

投稿者

くま子

勉強することが大好きな現役看護師です。看護師国家試験対策や新人看護師さんに必要な知識を発信しています!

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